今日、ダビデの町で起こったこと

『東方三博士の礼拝』ピーテル・パウル・ルーベンス、1609年 – パブリック・ドメイン

2024年12月17日

今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになった。
ルカによる福音書2章11節

 牧師になるためには、神学校を出て伝道師として主任牧師のもと勉強をします。わたしは札幌の教会で伝道師として3年間を過ごしました。
 伝道師3年目のクリスマスだったと思います。学生のMちゃんと一緒に教会の飾り付けをしていました。おしゃべりしながら、クリスマスグッズを並べ、電飾で教会の窓を飾ります。その時にわたしは「クリスマスって大好き。クリスマスを『クルシミマス』だなんて言っている人って信じられない。イエス様が生まれたこんなに嬉しい時なのに」と言っていたそうです。キリスト教関係の集まりでクリスマスのハードスケジュールを冗談めかして「クルシミマス」と言う人がいたのです。そして、わたしはと言うと優しくて仕事のできる主任牧師のもとで過ごす、のんびりした伝道師でした。
 牧師としてひとり立ちしてからは、そんなことも忘れてクリスマスのハードなスケジュールに忙殺されていました。1月に休暇をとって、数年ぶりに札幌の教会に顔を出した時です。Mちゃんが「先生、クリスマス楽しかった?クリスマス大好きって言ってたもんね」と声をかけてくれたのです。そんなことを話したことさえ忘れていたわたしは、びっくりしました。わたしの「クリスマスって大好き」という言葉を覚えていてくれて、数年後様々なクリスマスの行事をこなすことにやっきになっていたわたしに、Mちゃんは大切なことを思い出させてくれたのです。
 過去の自分のお気楽さが恥ずかしくなりましたし、そのことを忘れていた自分にもショックでした。しかし、クリスマスこそ牧師が一番喜んで、救い主の誕生を告げなければならないと思ったのです。
 「今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになった」。2千年前に起こったこのできごとは過去のものではありません。この日、わたしのために、そしてあなたのために命が生まれたのです。その命は十字架で死ぬ時も、復活する時も、そして今もわたしたちを愛し続けてくれています。クリスマス、それは働く人のために、ひとりで暮らす人のために、病気の人のために、誰かと仲違いした人のために、悲しんでいる人のために、全ての人のために命が生まれた日。ただあなたを愛するために生まれて、生きてくださる方がいます。
 やっぱりクリスマスって嬉しい時ですね。